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濁った色の下塗り

今回は連載中の油彩の手順から少し離れて下塗りについて見ていこうと思います。ビギナーの人は真っ白なキャンバスを買ってそのまま描いていることが多いですが少し慣れてくると下塗りの工夫が入ってきますね。アクリルで描くときにも下塗りすることがありますが油彩の隠ぺい力と透明性が共同作業で絵を良くしてくれます。

失敗してつぶしたキャンバスがあったので練習がてらサンプル描きました。皆さんにはお見せしませんが僕はけっこう失敗することがあります。お蔵入りというものですね。チャレンジするから失敗するわけなので上手くいかなくても落ち込んだりしません。反対になんとか解決してやろうとやる気が出てきます。

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このキャンバスの経緯をお話しますと失敗したのでまずは描いたものを全てキッチンペーパーで拭き取りました。せっかく描いたのに心が痛いところですがそこはグッとこらえて悔しさと共に拭き取ります。拭き取るときはテレピンをぶっかけて大きな筆で軽く揉んで絵具を溶かしてあげると割と簡単に拭き取れます。油壺に画用液が残っていたらそれを使ってもオッケーです。刷毛跡が残っていますが確かジェッソで地塗りをしてあったと思います。
できるだけ拭き取ったらそのままパレットに残っていた絵具で青黒い色にに白が少し加わった色を作って塗りつぶしました。厚めに塗る前提になりますがこのぐらい下塗りが濁っていても色はけっこう綺麗に出ます。


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形を取るのがめんどくさかったのでMass Block-in(マッスブロックイン)で攻めました。
簡単に言うと塗りながら形を出してしまおうというアプローチです。詳しくは最近の油彩手順を読み返してください。
有色下地のメリットの一つに不透明な塗りの利きがいいことが挙げられます。例えば背景を少し塗り始めましたが白いキャンバスにこの色を塗っても明るいところに明るい色なのであまり塗っているように感じないかもしれません。あと下塗りがあるとどのぐらいしっかり塗れているかわかりますね。
もう一ついいことがありまして下塗りのトーンより明るい色が綺麗に見えます。よく画面が汚れるのが怖いと聞きますが色を綺麗に出すにはある意味汚れあった方がいいとなりますね。


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久しぶりにナイロンの筆で平滑な塗りで描いています。前のステップから下に降りていきますがわざとパッチワークのようにタッチを残すスタイルです。右側に不思議な四角がありますが今は無視してください。後半わかります。
ヌードの絵を変に意識してしまう人が多いようですね。スペイン時代に何千枚と描いたのでなんの意識もなく描いていますが絵に慣れていない人からするとちょっと変な感じかもしれませんね。上手くなりたかったらヌードはたくさん描いた方がいいですよ。形の精度も上がりますし、美意識も高まる。欧米ではヌードデッサンは当たり前すぎて普通のことなのでグローバルスタンダードの感覚を身に付けたければ彼らと同じ感覚で。


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黒でモノクロデッサンしてから彩色するグリザイユに近い雰囲気の画面でなんとなくクールな感じがします。茶色の下塗りが多いですがまたひと味違う感じで面白いです。黒を使っていませんが肌色と黒は意外と相性が良く汚れたグレーがピンクの生っぽさをソフトにしてくれます。
もうすぐゴールが見えてきましたが足の部分は画面にどうおさまるか把握するためアタリ線を引いています。こういう描き方だとシャドウから塗るのか明るいところからなのか迷うところですが状況によります。シャドウからの方が失敗が少ないですが肌色が濁ってしまうこともあるのでそこだけ気を付けましょう。


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とりあえずひと通り塗り終わったところです。ここから最後の仕上げに入っていきます。
一番右のところにこの絵で使った絵具を乗せました。上からイエローオーカー、ローシエナ、バーミリオン、バーントシエナ、ビリジャン、ウルトラマリン。ほとんど僕のレギュラーパレットで使う色ではありませんが気分転換で。ローシエナはイエローオーカーを濁したような色ですが透明色なので肌のシャドウ部分に有効ですね。バーミリオンは赤オレンジという印象を持っていますがなんとなく色っぽい肌色になります。。黒はないですが下3つのトーンの低い色を上手に使えば黒に近い色は簡単に作れます。


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これで完成です。面白くない絵になってしまいましたがあの下塗りからどのぐらいの色が出るのか、また描き方の手順もご参考になればと思います。右側の四角は発色の違いをお見せするために作りました。バーミリオンでチェックしていますが下の色を変えるとどのような影響を受けるか感じてみてください。画像を拡大して横向きに置きました。


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左から下の色はイエローオーカー、ブラック、下塗りの色、ホワイトです。ちょっと話が逸れますが下塗りのイエローオーカーとトーンがかなり近いのですね。デッサンだとパニックになりそうですがトーンで見るとかなり近いのに色になるとはっきり分かれるパターンがあるので覚えておきましょう。
イエローオーカー下地は赤があまり利きませんね。色がお隣さんなので差別化されにくいようです。ブラック下地はかなりいい感じです。トーン差が大きいのも手伝って綺麗な色に見えますね。下塗りの上でもけっこういい線だと思います。ホワイト下地では綺麗に発色していますが絵具の生っぽさを感じます。補色のビリジャン下地は当たり前に綺麗な色を出すので省略しました。いかがですか。パレット上だけで綺麗な色を出そうとせずに画面上で色をさらに綺麗に見せるコツが少し掴めそうですね。

絵は実験の連続ですね。
失敗を繰り返したらなんとなくわかってきた→上手く描けるようになった
ではダメですか。
上手く描ける方法を探す…この言葉の心理は失敗したくない、下手な絵を描きたくない
→失敗するリスクを背負えない
仮に理論でわかったとしても腕ができるようになるまで時間がかかります。どうせなら楽しくたくさん描いてナチュラルに問題を解決してしまいましょう。

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