金属表現の実践

今日はステンレスなどのようなツルッとした金属を書くときのコツについて見ていきます。質感表現ですね。

石膏は上手に描けるようになったはずなのに金属などのモチーフに手を焼く人も多いです。反対に石膏デッサンしなくても金属などを割と簡単に描けてしまう人もいます。石膏デッサンは基礎的なモノの観方や考え方を安定させるのに役立つ一方で質感を省いたエクササイズでもあります。ある意味石膏デッサンの基礎が質感の強いモチーフに全く通用しないときもあります。石膏デッサンばかりやっていると理論頭になって「この形でこの光源の位置ならこういうトーン変化をするはずだ」と見たものとのズレにつながります。これがストレスになったり見たものを素直に受け入れることを拒むメンタリティになるケースをたまに見かけるので注意しましょう。結局のところ理論を知らなくても見えたものをそのまま描ければ質感は自然と出るのが理想です。これは質感に限らず。デッサンを繰り返して観察力をつけるのが応用力も付きますしナチュラルな上達ですね。

復習も兼ねて金属の特徴を挙げていきます。まずは写真をご覧ください。

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・ハイライトを利かせること
ハイライトは体感で紙の白より明るく感じます。この差を埋めるためにはグレースケールで同じ状況をなんとか作ってあげないといけません。鉄球内の映り込みで明るく見えるところもある程度しっかり暗くすることでハイライトの利きがよくなります。

・かなり暗い部分は怖がらずしっかり濃くする
金属は映り込みが多いので石膏像のようなきれいなトーン変化はしません。急激に明るくなったり暗くなったり。このトーンジャンプを描くことでそれっぽくなります。

・輪郭線に強弱がある
写真の鉄球では上部の輪郭が背景の映り込みになるのでトーン差はそこまで大きくありません。鉄球の方を少し濃くしてあげるだけで充分形は出ます。形を出さないと気持ち悪い心理はわかりますがそう見えている以上そう描くしかないですね。

以上を踏まえて軽くサンプル描いてみました。細かい描き込みをする前までのセクションです。

鉄球(連結)

左は下描きの段階です。ブログで写真にする前提なのでわかりやすくわざと輪郭をはっきり描いていますが色を塗ったときに裏目に出ているのがわかります。いらない輪郭線のために質感が損なわれていますね。色を塗ったときに邪魔になるような下描きは避けた方がいいです。
下描きを見ると鉄球内に不規則な形がいくつかあると思いますがこれは映り込みの形を取っています。これすごく役に立つので真似してください^^

生徒さんから好評を得ているアドバイス
「映り込みをざっくりとしたエリアで大きくトーン変化させながら塗ること」

映り込みを描こうとすると最初から「何が映っているのかな」と細かい部分を見てしまいがちです。その前に大きなパッチワークで各部分を塗り分けると説得力が出てきます。サンプルではそこまでの仕事しかしていないのでなんとなく質感が出てきたぐらいですがここからより細かく映り込みを描くことでもっと質感が出てくると思います。映り込みを鮮明に描くほど光沢のある質感になります。
そこまで描くのはけっこう手間ですよね。「写実っぽくないざっくりした絵が描きたい」という人もいると思います。最低限、金属の質感を出したかったらハイライトをしっかり利かせること、濃い薄いを大きく分けることを意識してください。この精度が上がればけっこういい線いくはずです。

色々な質感のある静物画はリズムがあって心地良いですね。質感表現をマスターしていきましょう。

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