教室にあるモチーフでの静物
四人展の出展作品も今日でご紹介が最後になります。最後の1枚!
生徒さんが普段レッスンで描いているモチーフを組み合わせて描いた静物です。
意図的に生徒さんが描いたことのあるモチーフを使って描こうと思いました。
どんな物でも美意識があれば作品になる。僕は今までそう思いながらやってきました。
モチーフが結構多いですがM8です。横長の絵にしたかったのでMです。
基本的にはアラプリマの描き方でグレーズはしていません。
グレーズと薄塗りを混同してしまう人がいますがグレーズはかなり薄いです。絵具:溶剤が2:8ぐらいのイメージです。
たまに5:5でグレーズする人がいますがこれだと薄塗りの範囲かなと思います。
描く手順は焦点のピエロから末広がりに少しずつ端を目指して描きました。指導では画面全体から塗るようにしていますが僕は僕の描き方がありますので基本は無視しています。
ピエロが焦点なので画面の両サイドは描き込みを弱めて鑑賞者の目がピエロにいくように工夫しました。実際にモチーフをセットしてピエロを見た状態はそんな感じだと思います。人間の目は一点しか見れませんので。
アラプリマとは言え、もう少し描き込みたかったので要所で何層かしています。
左側の葉は画面が完全に乾いてあとから付け足しています。細かい付属品は油彩のメリットを活かして上から強く塗って追加しましょう。
右側の革のカバンはスペイン時代に大変お世話になった人からのプレゼントです。いつかモチーフに使いたいと思っていました。
この絵を描いていた頃は精神的にもかなり疲れていて、モチーフにセットして自分を鼓舞する意味合いもありました。
キャンティワインの上の方のラベルは本当は白です。画面のキワ付近のことです。僕は暗い色で潰しました。あそこに白いものがあると目立ってしまうので僕なりの加工が入っています。
おもっきり言い忘れていましたがこの絵は写真から描きました。
教室の電気を全部消して1点灯、単光で写真を撮っています。
なのでシャドウはけっこう暗いです。暗いということはシャドウ内のディテールはそんなに描けないということ。ほぼただ暗いゾーン、かすかになんだか分かるような雰囲気ですね。
ピエロの足部分はシャドウ内なのでなんとなくの処理にしています。
解説はこんなところです。
スペインにお住まいの画家さんに展覧会の写真を送りました。
戦争や政治の抑圧のない日本は自由だと言っていました。
自由か不自由かは自分が決めること。
こと日本人は生き辛そうにしている人が多いですがそうしてしまっているのも自分なんですよね。
最低限食えるお金さえあればあとは自由。どう生きようが自由。
当然どんな絵を描こうがその人の自由です。
その自由を手に入れる手段としての技術。絵は上手くなることがゴールではないので。それより良い絵を描こうとすること。絵と対峙して自分と勝負、とことん自分と向き合うことが大切だと思います。
確固たる自分を持っている人は少ないですよね。絵を通じて自分を客観的に見れる時間はとても贅沢です。
日本では絵はお絵描き、趣味レベルにされがちですが、もっと高い次元で絵画、絵を描いてほしいと思います。
根付いてしまった文化を変えるのは数十年単位、もっとかかるかもしれませんが、少なくともCHULAPOに通ってくださる会員さんにはもっと深い部分で絵を楽しんでもらえたら嬉しいです。