四人展の出展作品の解説の続きです。今日は鶏でいきます。
以前この絵についての記事を書きましたが気付かれた方いますか。笑
まぁいいでしょう。

早速作品をご覧ください。

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一見バーントシエナ的な単色の絵だと思われるかもしれませんが5、6色使っています。全て暖色です。黒は使っていません。というか僕は黒を使いませんので。
先日のデモンストレーションでは黒を使いましたが時短のためです。

トーンは繊細に見極めなければいけません。色も然り。
ちょっとの色の差で絵が変わるので面白いです。

この絵もクラシカルな雰囲気にしたかったのでキャンバスに下地を作ってから描きました。けっこう何層も下地材を塗っています。
乾いては塗り、乾いては塗り。
地味なことを愚直に丁寧にすることは大切だと思います。
デジタルでは出せない味ですね。絵は物作りだと思っていてやはり丹精込めたものは人の心に響くのではと考えています。
僕の絵から何か出てると言われることがありますがきっとその成果だと思います。
下塗りのときから神経使うので消耗しますが良い物を作るとはそういうことですね。
良い土壌には良い作物が生る。

下塗りを乾いては塗りを繰り返すことで刷毛跡が重なり合って美しいテクスチャができます。
偶然と必然の産物です。

この精神は日本人的ですがスペイン時代に学びました。彼らの物作りに対する執念はものすごいです。自分が納得するまで完成はない。小さなことにも手を抜かない精神は素晴らしいです。これは絵に限ったものではなく、建築、革製品や工芸品などでも垣間見れます。

タッチ(筆跡)はその人のリズムと美を反映します。
ベタ塗りで下塗りしないよう指導するのはその人の個性を引き出すためです。
多少汚い下地になろうと出来上がったものはその人の心が入り込んできっと美しいものとなるでしょう。

鶏の絵には白は使っていません。
明るい部分は全て下地の白を活かしたものです。水彩と同じ要領。
最近の記事を読んでもうお気づきだと思いますが僕は白絵具がそこまで減りません。
白絵具の減りが早いのは油彩を扱えていないと教えられたことがあります。世界のトップクラスの画家はパレットに白絵具を他の絵具と同じ量しか出していませんね。そういうことだと思います。

普段グレーズはしませんがこの絵は渋くさせたかったので何発かグレーズしています。
トサカの赤を利かすためにも全体的に汚れた方がいいかなと思いました。

留学中はマドリード特有のマンチャ(染み)を活かしたデッサンを学びました。
世界中でアカデミックなデッサンがされていますがこれとはひと味違ったものです。口で説明するのは難しいですが僕の宝となっています。
普通のアカデミックデッサンは上手くなるための意味合いが強いような印象ですがマンチャのデッサンはアーティストになるための土台作りみたいな感じがします。

こういった経緯があるので染みを活かした絵が好きです。
染みとは汚れにも似たものですが偶発的なので美しいです。

最近心掛けていることはわざとらしい絵を描かないこと。
習作はいいですが作品作りになると色々考えてしまいますよね。
描き手が考えて描いた絵は鑑賞者も考えてしまいます。
絵を観たときに考えてしまうということは絵そのものから受け取る何か、五感に訴えるものが遮断されてしまうと思うのです。
ある作品をより良く理解するために描き方の意図や作品作りの背景を考えるのはいいことですが、その前に感じることがアートしている意味のような気がします。
できるだけ僕の感じたものをダイレクトに伝えたい。
なので作品と言えど、ただ描くだけです。

鶏の毛も同じで毛の質感を出そうとは考えていません。
観えたまま何も考えず感じたまま手を動かしただけです。

本画では頼りになるのは日々の修練だけですね。
自分の腕を信じれるまで。
理想目指してこれからもコツコツやっていきます。

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