油彩の手順2

前記事ではモノクロでデッサンをしてから彩色する手順をご紹介しました。最初のステップのデッサンでは木炭デッサンのように濃くしたり明るくしたりしながら形を出すアプローチでした。今回はしっかり線で形を取ってから彩色する手順を見てみましょう。

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クラシカルでしょう?形を取る前にバーントシエナとピーチブラックで下塗りしました。乾かさずにそのまま線描、ブロックインです。線描した色は下地と同じですが濃度を上げて描いています。仕上がりはアカデミック風ですね。シャルル・バルグのデッサン教科書のように線でしっかり形を出しました。形が取れない言い訳でアナトミーに逃げるのでなく自分の眼を信じて一生懸命形を取る。線でカチッと形を取るのが嫌いな人多いですよね。特に日本では鉛筆デッサンでもトーンをつけながら形をなんとなく出していく描き方をするケースが多いです。線だけで形を出すのはストレスがかかる。たまには自分にストレスかけてトライするのもいいですよ。それだけ上達しますから。このセクションでは弱めにモデリングしました。軽くシャドウをつける感じですね。
話が戻りますが下塗りで黒を使うのなんとなく嫌じゃないですか。白を混ぜたグレーならいいのですが薄めた黒ってなんか汚れそう。後ほど結果を見てもらいますがけっこう大丈夫です。下塗りは少し汚れた色の方が調子いいかもしれませんね。本塗りしたら下塗りの方が鮮やかだったでは厳しいですし、下層の彩度が低い方が本塗りで色が綺麗に出たりもします。では次のステップへ。

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実はこのキャンバスは吸収性のジェッソで地塗りしました。吸収性ですので絵具を塗るとサーッと油分が沈んでいきます。マット仕上げの絵になります。久しぶりだったので対応に困りましたがすぐに作戦変更。塗り伸ばすことはせずにスカンブリングで挑むことにしました。スカンブリングとはドライブラシで塗っていくような技法です。僕の油彩はかすれが多いですがスカンブリングですね。肌色も今回は少し色のコンビネーションを変えて作りました。渋みがあってけっこういいでしょう。

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完成です。伸び伸び描いていて楽しそうでしょう。もともと絵は自由なので好きに描けばいいんですね。ただその絵で自分が納得するかどうか。納得しなければコツコツやればいいだけです。背景の緑はナイフと筆の併用で描きました。人体を描くときの重要な要素に重力があります。重力を感じる人物画。例えばサンプルでは右肩に上半身を支えている感じを出しました。あと右モモはドレープ効果で脂肪が少し垂れているようなニュアンスです。こういったことを取り入れると人体の重さが伝わる絵になります。

○鉛筆の下描きについて
指導ではビギナーに鉛筆での下描きはオッケーにしています。僕もどうしても時間がないときなどは隙間時間に鉛筆で下描きすることもあります。ただキャンバスと油絵具の間に鉛筆が入るのは少し気持ちが悪いところです。細密に描く前提でなければ油彩で下描きした方がいいですよね。傍から見るとその方が玄人っぽいし。ラフに描けるのも油彩のメリットなので怖がらずに油絵具での下描きにどんどんトライしましょう。

CHULAPOももうすぐ5年が経ちます。生徒さんの描く絵からたくさんのことを学ばせていただきました。様々な発見を与えてくれて僕の研究する材料は尽きません。おそらく一生未熟者でしょう。生徒さんの学びたい気持ちに応えるためにまだまだやらないといけませんね。

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