オリジナルのタッチを残す

暖かい週末で過ごしやすかったですね。自粛が続いていますが少し散歩するだけでもかなり気が晴れます。欧米の厳しいロックダウンでも運動の時間は許可されることがありますがやはり人間は動物。体を動かさないとおかしくなってしまいますよね。僕も絵ばかりで引きこもっているとモヤモヤしてくるのでたまに散歩に出掛けます。夕方の時間帯が好きで家も少し高台にあるのでそこからポーッと町並みを見てほっくりです。職業病か色ばかり気になって観察が始まってしまいますがそれもいいでしょう。自分の中にカラーチャートがあってそれにはめ込むイメトレをしています。もうだいたい自分のパレットは決まっているのでこの色とこの色、それとあの色を少しかなとかマニアックな遊びです。

滝を描きたくなりました。水描くのって難しいですよね。実体があるようでないような。自然の中にはこういったものが多いので困ってしまうことがありますが自分の真の観察力を試すには良い機会になりそうです。花や人物などある特定のモチーフを描き慣れてしまうと観察をおろそかにしがちですが自然は常に観察する心を初心に戻してくれます。

では描き始めのところから見ていきます。

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夜遅くに突発的に描きたくなったのでひどいスタートになりました。疲労と時間がなかったので仕方がない。絵を描くことを習慣にできない人は最初の一歩を踏み出せない人が多い印象です。上手くなるにはたくさん描かなくてはいけないのは知っているのだがなかなか行動に移せない。絵以外でも言えることだと思いますがちょっとだけやる気持ちでスタートするとできてしまうものです。2時間描くぞではなく、気付いたら2時間経ってたみたいな。でも強制的な特訓はよくないですね。描きたいから描く。無理すると楽しいものがストレスになってしまいますので。僕は平日(!?。教室の営業日)は次の休みには何を描こうか考えています。モチーフをイメージしたり画材の準備をしたり。休みになったら描くことだけに集中する環境を作っておく。仕事の前に下地作りや下塗りなどをしておくこともあります。油彩は段取り良く。絵はけっこう時間の必要な行為でこういった準備があるとはかどります。

このセクションでは大きい筆でザックリと画面作りをしました。そんなに奥行きのある風景ではないので近景と中景の2レイヤーベースの画面です。滝の上の木々が一番遠くにあるイメージで少し遠近感を出せるかなという感じです。遠くにある物は少し白を多めに混ぜることで空気のヴェールを表現できますね。白が入ってないと色が生っぽくて彩度が高すぎることが多いです。茶色で下描きしていますがあまりわからないですね。左上に少しだけ残っています。先日のウサギさんの記事の下描きと同じようなアプローチなのでかなり全体に茶色が入りましたが固有色を塗ったら消えてしまいました。ここで一度乾かして次のセクションです。

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完成です。なんとなくO構図なのかな。両サイドの木々と水面で焦点の滝が丸く囲まれているような雰囲気です。縦が崖のトップと水面のラインで丁度3分割されていておさまりがいいですね。滝の位置も横幅の3分割にありますのでバランスが取れました。滝が真ん中にあったら単純過ぎますよね。前のセクションで緑の鮮やか過ぎたのでくすませました。本当は鮮やかな緑だったのですが絵作りのために変更しました。最初のセクションでもタッチが残っていますがやはり最終層が大切になります。下層の仕事も影響しますが最終層のタッチが直接鑑賞者の目に入りますので。僕は抽象化した要素が好きでそれをタッチで表現できたらなと色々と試行錯誤しています。写真のように描くことをしないのであればなにかしら抽象化が必要になるわけで。抽象化、例えば木を抽象化すると模様のようになったりしますよね。この絵の木には乱雑なタッチが入っていますが描いているときは木に見えなくてもいいと思っています。それよりもタッチの勢いやリズムなど優先して鑑賞者に心の振動や躍動を伝えることを意識しています。ただきれいに描いてあるだけの絵だと心があまり動かないですよね。もう少し大きな振動を与えたいとの狙いです。勢いのあるタッチを習得するにはクロッキーが有効です。感情を揺さぶるタッチを学ぶにはクロッキーはもってこいです。クロッキーの修練でただの雑な線がやがて洗練されて意味のある線に変わっていくと思います。文章で伝えるのは難しいのですがたくさん描けば気付きがあるはずです。スポーツでも練習でつく筋肉とジムで鍛える筋肉を分けていますよね。絵もいろんな角度から取り組んだ方が総合能力を高められると感じています。CHULAPOの鉛筆デッサンでは規則的な法則のハッチングをある程度放棄しています。緻密に線を引くデッサンよりも自由を尊重するドローイングアプローチになります。その際、制御筆跡(左脳モード)と解放筆跡(右脳モード)を区別するように指導しています。この辺の理解も筆を握ったときに直結してきますので油彩のタッチにはデッサンのときから繋がっています。腕を取り替えて描くわけではなく使う脳は同じなので当たり前ですね。将来的に油彩に限らず、アクリルなどタッチが残る絵を描く予定の人は規則的な法則に従った線のデッサンでは個性あるオリジナルなタッチを身に付ける弊害になるのではないかとも思います。

最近、周りから絵が上手くなったと言われることが多いです。生徒さんがいる身ながら恥ずかしいですが自分でも実感しています。人間何のために自己研磨するのか本当のところよくわかりませんが前向きにトライしないとつまらない毎日になることには気付いています。皆さんもそうですよね。描きたいものがあってカッカしているので明日もトライです。

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