ザラザラしたマチエール

前回記事でマチエールに触れました。今回は割とやっている人も多いと思いますがキャンバスをザラザラにするタイプをご紹介します。
実ははこのキャンバスは去年の4人展で使うはずだったのですがどうもしっくりくる絵が描けなくてお蔵入りになったものです。失敗してからいつか使ってやろうと寝かせておいたわけです。生粋の負けず嫌いなので部屋でこのキャンバスを見るとにらめっこしていました。僕は指導する立場ではありますがもちろん失敗することもあります。なんでも次のステージにいくには失敗は付きもの。失敗してもオッケーっていうメンタリティは絵ではとても大切です。絵に限らずなんでも大切ですね。チャレンジしないと現状維持。。。
解説の前に絵をご覧ください。

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漆喰の壁に描いたような雰囲気ですね。イタリアでフレスコ画(教会などの壁に描く技法)を習いましたが少しそれを思い出しました。

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わかりにくいので少し拡大しました。近くで見ると何が描いてあるかわからないかもしてません。一見、雑に見えますし。でもそれがいいんですよね。線ではなくトーンで描くとそうなります。キャンバスから離れるにつれて何が描いてあるかわかるようになる。これがトーンで描けている証拠です。
画面左側のシャドウは濃いめのグレーズです。透明色の絵具を溶剤の量でトーンコントロールして塗っています。水彩と同じですね。
タッチについてですがこのザラザラした表面を利用しない手はないでしょう。「色を塗るタッチ」なのか「描くタッチ」なのか。ベースとなる固有色とシャドウは塗る。これで画面がある程度構築できたら描くタッチに切り替える。描くタッチでは細かい描写はもちろん、固有色以外の色味も追加して付加価値を与えていきます。

肝心な話忘れていました。このザラザラしたキャンバスをどうやって作ったかですね。ジェッソを何回も何回も塗り重ねています。塗るときにコツがあってスタンプするようなタッチで塗ることです。厚塗りしてスタンプすると毛羽立ちますよね。それを何回も繰り返すと今回のようなキャンバスになります。めんどくさいですが味のある効果を生むにはこういった作業は必要です。

この絵はほとんど細い筆は使っていません。もともとザラザラしたキャンバスなので細かい仕事をしてもあまり意味がありませんよね。支持体(紙、キャンバス)の細かさは写実性に比例します。写真みたいに描きたければツルツルのものを、ざっくりの絵なら粗い目の支持体を選ぶといいでしょう。

絵は描こうとするほど邪念が生まれます。客観的視点から取り組めるとストレスも減り、自然な絵に仕上げると思います。

明日も描きたい絵があるのでこの辺で。

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