早めに画面を大きく構築する

デッサン力があること=写実まではいかないまでも具象でしっかり描ける能力
僕にはもうこの考え方はありません。適当にサラッと描いた絵もデッサン。そこにはデッサンしているという感覚すらありません。もっと言うと絵を描いている感覚すらないです。前回記事で石膏像のストレート・ブロック・インをご紹介しましたがあれもデッサンです。形の取り方の確認作業でありましたが僕にはあの作業で言葉では説明できないことを学びました。皆さんはしっかりデッサンしてくださいね。そのうち自然に僕みたいな感覚になると思います。

年末なので今日は部屋を片付ける次いでに画材の断舎利をしました。使ってフィットしない画材ってありますよね。でも使ってみないとわからない。絵具もそう。気になる色の絵具があったら買って試しましょう。色味もそうですが透明感、水彩ならグラニュエーションの感じなど絵具によって言葉で説明できない違いがあります。試してダメなら友達にあげてもオッケーです。体感することは絵では大切です。絵は感覚ですることですからね。

今日のお題は「早めに画面を大きく構築する」でしたね。絵は物を描くだけではないとは散々書いてきましたがその延長です。僕は作品として壁に飾られたときを前提として指導しています。こうした感覚がないと展覧会、または家に飾るときに力不足の絵になります。指導のときには紙からひと回り大きいところまで描く意識で描くように言っています。

少し肩慣らしにアグリッパ描きました。モチーフが少し大きくなると形を取るきっかけが掴みにくくなるものです。この理由は形は外形線(輪郭線)で取るものだという思い込みが強いからだと思います。

モチーフが大きくなったら中から形を取りにいきましょう。
その要になるのがシャドウの形ですね。この段階で細かいディテールはぜーんぶ無視です。当たり前ですが外形も決まってないのに細かい部分などを描いてもその場所が合っているわけがありません。

auto_NQ6131.png

○形を取ったあとにやったこと

・石膏像のシャドウ
・石膏像と背景の固有色を乗せた

以上です。

形を取ったあとに局所的に描きたがる人がいますが見ているゾーンが狭いです。1枚の絵で勝負するには大きく画面を作っていく必要があります。



サンプルのような状況を早めに作れると手順がスムーズです。
その理由は…

・画面全体のトーンの関係性が把握できる
・上のことに付随してトーンの比較対象ができる
(紙の白い部分が多く残っていると比較対象がいない。ハイライトがあるモチーフセットではハイライト以外に少なからず薄いグレーはつく)
・形の精度をあげることができる

輪郭線だけでは気付けなかった形の狂いがわかります。例えば同じ形でもトーンが暗いと細く見えます。「シャドウの形を取ったがトーンをつけたら思ったより小さく見える」など。反対にトーンの明るいものは膨張して見えるので少し絞ってあげたり。

これが最初にする画面を大きく構築する仕事です。鉛筆で描いたのでモノクロですが油彩などのペインティングになると色が関わってきますね。この時点でその絵のマザーカラー、主色になる色もなんとなく決まります。色彩で魅了される絵はここから勝負が始まっています。

〇一点灯での理解
一点灯はビギナーが学ぶ上でとてもメリットが多いです。上達が2倍速になるような気もします。ライティングなしの蛍光灯だけで描いているとカゲがいくつもできます。これではシャドウ内でどういったことが起きているかビギナーには理解できません。一点灯で学んだ人が多重光源で描くのとは違いますね。

☆一点灯で理解できること
・シャドウ内は見えにくいゾーンだから明部より描き込みが弱まる
・シャドウという大きなゾーンが持つトーンが構図に関わってくる
・正しい明暗が細かいディテールの描き込みよりも絵に説得力を与える

これらは一点灯で描きながら体感することで納得できます。

〇Cast-Drawing(キャストドローイング)
一点灯でのエクササイズを欧米ではキャストドローイングと呼んでいますね。光を考察しながらそれを描きながら腕で確認していく。とても素晴らしいことだと思います。ドラマチックなデッサンになるのでかっこいいですね。ただシャドウがかなり黒くなるので(反射光が入りにくい環境のため)色を使ったときに少し調整する必要がありそうです。シャドウの色味は絵に大きな影響を与えます。特に反射光は大切な要素。自然光(窓から入る太陽光)が好まれるのもこのためですね。

〇明部とシャドウのトーン幅
明暗のトーン差が大きいほどインパクトの強い絵になります。トーン差が狭くなると淡くなる。このトーン幅は描き手によってコントロールしてもいいと思います。教室では観えたトーンを乗せるのがエクササイズですが作品作りでは狙いによって調整するのも面白いです。観えたトーンを乗せれるようになってからですよ。これができないのに淡い絵が好きだからと言ってハイキーの絵は難しいです。

けっこうたくさんのことをお話しましたがご参考になればと思います。

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